◆医療・福祉・介護・保健における適切なケアに関して協議・研究し、教育と普及に努めます。


■第10回キャリアアップセミナー
「認知症の理解と予防」

2011年11月にスタートした総合ケア推進協議会主催・キャリアアップセミナーも、今回で第10回を迎えることとなりました。 記念すべき10回目のセミナーは「認知症の理解と予防」と題して、3月27日(日)、新宿・紀伊国屋サザンシアターで開催されました。
講師には、レビー小体型認知症の発見者で横浜市立大学名誉教授・小阪憲司先生、スロージョギング提唱者で福岡大学身体研究所所長・田中宏明暁先生、大脳生理学がご専門の京都大学名誉教授・久保田競先生をお迎えし、講義と実技の二部構成で活気溢れるセミナーとなりました。

第一部「レビー小体型認知症の理解」にご登壇いただいたのは、1976年に最初にレビー小体型認知症の症例報告をなさった小阪憲司先生です。
レビー小体型認知症は、初期の段階では認知症状が目立たないことが多く、パーキンソン症状や行動障害、うつ症状などの周辺症状が現れやすいことから誤診に繋がりやすいそうです。
誤診によって患者さんとご家族のQOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)の低下を招きやすく、またレビー小体型認知症の症状には薬に対する過敏性もあるため、間違った投薬によって症状を悪化させる場合があり、患者さんの苦しみを長引かせる恐れもあるそうです。 そういったレビー小体型認知症の症状や、診断の難しさ、早期の発見方法や治療法などについて、医学的な観点からお話しいただきました。

続いて「運動面からの認知症予防」にご登壇いただいたのは、先ごろ天皇皇后両陛下もご健康維持のために取り入れられて話題となった『スロージョギング』の提唱者である田中先生です。
スロージョギングとは、文字通りゆっくりしたペースで走ることで、高齢者にも無理なく行えます。歩行時に比べて2倍のカロリーを消費するため生活習慣病予防にもなり、認知症に関わりのあるベータアミロイド蛋白も減少すると言われています。
田中先生の研究チームによると、認知症予備軍の方々にトレーニングをしてもらったところ、認知症の発症が抑えられることもわかってきており、そういった運動と認知症予防の関係について、お話しいただきました。

続く第二部では、まず久保田先生から、手指の動きと脳の関係について教えていただきました。 近年の脳科学の研究では、全ての運動は脳の前頭前野から始まることが立証されました。 手をよく動かすことで頭もよく働くようになり、さらにこの機能は使わないでいると使えなくなってしまうことから、手指の運動をすることで脳の機能が高まり、認知症の予防に繋がるのだと久保田先生は力説されました。

続いて小阪先生から、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症のそれぞれの危険因子についてのお話がありました。 また、認知症は精神生活や社会参加が不活発なことも影響するため、予防するには外に出る、散歩をする、人に会うなどが有効だと教えていただきました。

最後はいよいよ実技です。『総合ケア運動』と名付けられた認知症予防の体操は、田中先生のスロージョギングと久保田先生の手指の運動、そしてストレッチを『げんこつ山のたぬきさん』のメロディーに乗せて行う、楽しく簡単な体操です。それぞれの先生方に具体的なやり方をご指導いただきながら、ご来場方の数名にもご登壇いただいて、なごやかな雰囲気の中、約3時間のセミナーは終了しました。