◆医療・福祉・介護・保健における適切なケアに関して協議・研究し、教育と普及に努めます。


問題解決につながる「傾聴」のスキルを講義――第1回キャリアアップセミナー(1)

総合ケア推進協議会は、11月19日、介護・医療従事者へのスキルアップを目的として、資格取得キャリアカレッジ第1回キャリアアップセミナーを開催した。
セミナーでは、「ケアに活かす傾聴術」「認知症の診断・治療・ケアについて〜新規治療薬の話題も含め〜」、ディスカッション「これからの時代に求められるトータルケアとは」の3つのプログラムが行われた。


「ケアに活かす傾聴術」では、看護師・救急救命士であり医療コーディネーターの堀エリカ氏が、医療・看護・福祉などあらゆるケアで求められる「傾聴」の目的と方法について講義した。

医療コーディネーターとして、患者が納得して医療を受けられるようサポートしている堀氏は、ケアの現場で求められる傾聴とは、患者の意思決定に働きかけ、自分で問題解決ができるように導く「能動的な傾聴」だと語った。





講義では、まず、聞く=日常的に人の話を聞くこと、聴く=耳を傾け、目も心も使って聴くことの違いについて説明し、ケアの現場で必要な傾聴のスキルを、ケーススタディを織り込みながらわかりやすく説明した。
能動的な傾聴の基本は、理解と同意。相手の話に「そうですか」とあいづちを打ち、「あなたを受容していますよ」と伝えることで、話をしやすい雰囲気を作る。
フィードバックも大切なテクニックで、「『眠れないんだ』と言われたら、『なかなか眠れないんですね』と表現を少し変えて返し、話を理解していることを伝えるのがフィードバック。このやりとりを通し、話し手は自身の抱えている問題を整理・理解できるようになり、自分で問題を解決する方へと向かえるようになります」と堀氏。

傾聴においてNGなのが、聴き手の意見を押しつけたり、話し手の考えを変えたりする行為。そのために求められるのが、批判しない・同情しない・教えようとしない・評価しない・励まさないの「5ない」の徹底。

「辛い経験を聴き、同情に陥らないためには、『問題所有の原則』を意識することが大切。問題を抱えているのは、あくまでも話し手の患者さんや利用者さん、ご家族です。 ケアする人が相手の感情に同化して巻き込まれてしまうと、依存の感情を引き起こし、問題解決の妨げになってしまいます。共感と同情は違うことを理解してください」


人の心理への深い理解も求められる傾聴は、ハードルが高いと感じるが、「傾聴で大切なのは、とにかく場数を踏むこと。最初から完璧にやろうと思わず、試行錯誤しながら身につけていって」と堀氏。
また、神経を集中させる傾聴は、聴き手にとって多大なエネルギーを必要とするもの。
「ひとりで抱え込まない、スタッフに協力してもらうなど、ストレスをためない工夫をして。オンオフの切り替えをしっかりする、リフレッシュする趣味をもつのもおすすめです」とケアする人の立場に立ったアドバイスもなされた。

 

 

総合ケアの視点づくりとケアの現場の問題点を討議――第1回キャリアアップセミナー(2)

総合ケア推進協議会は、11月19日、資格取得キャリアカレッジ第1回キャリアアップセミナーを開催した。セミナーでは、「ケアに活かす傾聴術」「認知症の診断・治療・ケアについて〜新規治療薬の話題も含め〜」、ディスカッション「これからの時代に求められるトータルケアとは」の3つのプログラムが行われた。


「ケアに活かす傾聴術」に続いての「認知症の診断・治療・ケアについて〜新規治療薬の話題も含め〜」では、祐ホームクリニックの医師で、がん患者や認知症の高齢者の在宅医療に携わる林恭弘氏が、認知症の診断と治療、ケアについて講義した。






認知症の症状や種類、治療の考え方や上手な介護の仕方、最新の治療薬について解説され、認知症のケアを難しくさせる周辺症状には不安感が大きく関わっていること、「叱る」「怒る」などの対応は患者の不安を高め、周辺症状を悪化させることなどが説明された。


ディスカッション「これからの時代に求められるトータルケアとは」では、進行役の堀エリカ氏、林恭弘氏、文化人類学者の佐藤壮広氏の3人が登壇し、ケアの現状を踏まえながら、総合ケアの視点の必要性について討議した。
最初に、佐藤氏から「文化人類学におけるフィールドワークの視点でケアの現場を捉えることが、課題の整理や総合的な理解へとつながる」との提言がなされた。

文化人類学の視点で考える健康とは、医師が認定する疾病ではなく、個人が自分の体の状態について認識するものであり、そのような個々の人に見合った健康や病気を理解しようとする態度こそが、総合的なケアに求められるとし、「認知症の言動も症状として見るのではなく、その人がその場所や人間関係をどう見ているかという物語と捉える。その人にとってリアルな言葉に寄り添うことに、ケアの可能性があるのではないか」と語った。

提言を受けて林氏は、山形の農村地域で認知症の高齢者が農作業をしながら治療を受けている例をあげ、「認知症になってもできる仕事があるなど、認知症を認める環境の中では、本人も認知症であることを自覚し、自分らしく生活できている。反対に、都会では『認知症になったら何もできない』という価値観が強い。そうした環境を変えていくことが必要では」と語った。





その後、討議は、会場の参加者の意見を募りながらケアの現場の課題へと進み、組織における問題点や、労働環境や給料などの待遇面などについても語られた。

堀氏は、厳しい現状に理解を示しながらも、「今できることは、横のつながりを強くすることでは。ケアをしている人こそケアを求めている。家族、仲間、チームの必要性が高まっている」「ケアの提供が粗雑になる危険は避けなくてはならない。認知症の人のケアをする時に観察しているつもりが、実はケアする方が観察されている」という言葉に、大きく肯く参加者も多く、課題を共有していることが感じられた。


ケアの問題にも総合的にアプローチする討論は、第2回以降のセミナーへの期待を高めるものとなった。


出典:ケアマネジメントオンライン 2011年12月09日